侵入禁止!?危険すぎて人間には立ち入ることさえ許されないSCP3選!!

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不思議で怖くておもしろい!そんなSCPを紹介したいと思います!

今回は侵入してはいけないとても危険で恐ろしいSCPを3体紹介します!!

Thomas DardenneによるPixabayからの画像

SCPとは

SCPとは常識に反した超常的な存在です。生物に限らず物や場所などのことを指すことがあります。それらを確保、収容、保護することを目的としているのがSCP財団です。

SCPには収容難易度によってランクづけされておりオブジェクトクラスと言われています。

Safe(セーフ)
 注意して収容しとけばそんなに危険じゃないよ!

Euclid(ユークリッド)
 よくわからないことが多くて危険だよ!収容が難しいかも・・・?

Keter(ケテル)
 収容することができない!なかには人類への壊滅的な危機または世界が終わる危険性があるよ!!

主にこの3種類に分類されてます。

SCP-529-JP 禁足地

オブジェクトクラス: Euclid

Vincent CiroによるPixabayからの画像

特別収容プロトコル:SCP-529-JPは財団の管轄する特別隠蔽区域及びエリア-8178に指定され、防護柵やコンクリート壁などで完全に囲われます。 周辺には如何なる人工物の設置も許されない為、SCP-529-JPから1kmの間隔を置いて鉄柵が周囲を囲む様に設置されています。

内部への一般人の立ち入りは如何なる場合においても許可されず、侵入し対象となった人物には記憶処理が施されます。その後の対象に発生する事象に関しては不慮の事故として処理され、カバーストーリーは発動されません。

担当職員はSCP-529-JP及びSCP-529-JP-1の調査の為、月に一度内部探査を行う必要があります。探査の際にはDクラス職員に小型カメラが内蔵されたゴーグルを装着させた状態で侵入させ、脱出後に回収された映像や写真等から異常な点が確認された場合は速やかに上層部へ報告されなければなりません。

 SCP-529-JP-1の位置する陸地へ上陸する事は如何なる場合においても許可されません。また担当職員がSCP-529-JP-1を直接視認する行為及びSCP-529-JP-1を撮影した映像・写真を視認する行為は、間接的にSCP-529-JPの影響を受ける可能性が高い事から禁止されています。

この為、SCP-529-JP内部へ侵入する人物に映像機器を装備させる行為は処分の対象となります。現在は空間認識特化型AIを搭載した小型無人探査機を用い、送信された映像をコンピューターグラフィックスに変換する事でSCP-529-JP-1及び周辺の環境に関する情報を獲得しています。

説明:SCP-529-JPは愛知県設楽町に存在する直径およそ3kmの森林です。SCP-529-JP内は周辺環境と異なり、外来種が存在せず樹高や主幹の幹周から推定される樹齢が軒並み異常に高い事が判明しています。

また、SCP-529-JP内部の樹木は自然環境における火・雷・疾病等の自身を害する要素に対する耐性を有しますが、人為的な損傷や破壊に対する耐性は一般的な樹木と同程度です。特筆すべき点として、内部では如何なる動物の痕跡も発見できなかった事、常に無風・無音の状態である事が挙げられます。

SCP-529-JPに侵入した瞬間、人間を含む動物(以下、対象)は脅迫性の強い嫌悪感を認識します。マウス等を使用した実験では、SCP-529-JP内に侵入した瞬間に脳内の扁桃体の働きが異常に活発になり、現在までに98.2%の例が脱出を試みる結果となりました。

Dクラス職員を対象とした実験では、内部に侵入した際に「空気が重苦しい」と表現される周辺環境の感覚的な変化を報告し、SCP-529-JP内部への更なる進行に嫌悪感を表しますが、これは他者からの度重なる呼びかけや命令によりある程度解消が可能です。

入るだけで嫌悪感があるのか、絶対すぐ逃げた方がいいじゃん!

内部を移動する際、対象は現在まで確認されている全ての例において、

  • 何者かが自身を見ているという強烈な感覚
  • 不自然な木々の揺動
  • 人間とみられる生物の幻覚

という共通した認識・現象の発生を報告しています。

SCP-529-JPの中央部には円周79m、最大水深5mの非異常性の池、更にその中央に位置する場所には直径2m程の陸地が存在します。陸地にはSCP-529-JP-1に指定された4本の不明な樹木で構成された1.8mの歪な逆円錐状の柱が確認されています。

異常な点として、SCP-529-JP-1は地面への埋没部分が存在せず、陸地の中央部に向かってそれぞれが78度の角度を保持したまま屹立している事が挙げられます。

SCP-529-JP-1を直接認識した対象はSCP-529-JP-1に重なる様に明確なイメージを有する幻覚を認識します。幻覚は体長3m前後の鹿や馬に類似した生物の形状を取る事が現在までに判明しています。

Dクラス職員を用いた度重なる実験の末、SCP-529-JPの異常性は以下の行為を行った場合に発生する事が判明しています。

  • 根を踏む、5mm四方以上の表皮を剥がす、人為的に葉を散らす等の木を傷つける行為
  • SCP-529-JP-1を視認する行為

SCP-529-JP内部で上記の行為を行った対象は脱出後、最長で36時間以内に非異常性の偶発的事象によって必ず死亡します。現在まで確認されている主な死亡例は心臓麻痺や持病の悪化・交通事故・落雷の直撃など多岐に渡り、財団が確認した中では現在までに少なくとも2????人の人間・492頭の動物が死亡したと推測されています。

めっちゃ犠牲になってるじゃん、これは封鎖しなきゃダメだわ

補遺1:SCP-529-JPはかつて、日本の異常存在を管理していた蒐集院が蒐集物第〇五二九番として収容しており、第二次大戦後、管理権限が財団に移譲され現在に至ります。

SCP-529-JPに関する最も古い記録は1600年代から存在していますが、それらはSCP-529-JPに関する管理方法を纏めたものであり、如何にして蒐集院が管理するに至ったかは判明していません。以下はかつてSCP-529-JPの担当をしていた蒐集院の故・坂凪研儀官にSCP-529-JPに関する仔細を聴取していた際に記録された音声記録です。

記録日時: 1946年2月9日

インタビュアー: アリヤ博士2

対象: 坂凪研儀官3

<記録開始>

[不要な部分を削除]

アリヤ博士: 坂凪研儀官。あなたは長らくSCP-529-JPの担当として勤めてきたと聞いていますが?

坂凪研儀官: そうだな。少なくとも20年以上は〇五二九番を見てきている。

[紙束を机に置く音]

アリヤ博士: こちらは現在編纂されている蒐集物第〇五二九番、改めSCP-529-JPの報告書を簡易的に翻訳した物です4。財団が認識している異常性や実行している特別収容プロトコルなどはこちらにまとめたられた通りです。

[紙を捲る音]

坂凪研儀官: [無言]

アリヤ博士: 他のアノマリーと比べても情報が明確に少ない。確かに異常性はシンプルですが、それを加味しても情報量の差は明らかです。少なくとも100年以上管理されてきたのであれば、より精密な詳細が記されていてもおかしくはありません。

アリヤ博士: 坂凪研儀官。あなたを信頼していない訳ではありません。しかしお伺いします。SCP-529-JPに関する何らかの情報が我々には未だ開示されていないのでは無いですか?

[しばらくの無言]

アリヤ博士: 一体何があったというのですか?

坂凪研儀官: ……簡潔な答えだよ。〇五二九番を深く知る者が、皆突然死んでしまったというだけだ。

[しばらくの無言]

坂凪研儀官: 大戦時、私の上官であった??一等研儀官をはじめとする蒐集院上層部は、〇五二九番内に存在する何かを求めていた、という噂を耳にした事がある。

アリヤ博士: 何か、とは?

坂凪研儀官: 詳しくは聞かされていない。だがあの森の中に彼らが求めるものがあったのは事実だろう。

坂凪研儀官: 大規模な内部調査の申請を上層部に回す様に命令を受けた時、それを強く実感した。私以上の権限を有する人物が羅列された申請書や軍への小隊の召集令状が見られた事、書類を渡した時の??一等研儀官の異様な態度から、この件には触れぬ方がいいのだろうと直感した。今はその判断に救われてここにいるのだがね。

アリヤ博士: そして内部調査が実行されたと。

坂凪研儀官: ??一等研儀官は神道に明るい何人かの研儀官と陸軍小隊と共に向かった。そこからだ。恐ろしい出来事が続いたのは。

坂凪研儀官: ??一等研儀官と陸軍の小隊が戻る事は無かった。後の定期調査で彼らの死体が発見されたからだ。ある者は外傷無く苦悶の表情を浮かべて、ある者は何かに潰されたように臓物を撒き散らし、ある者は全身が黒焦げの状態で発見された。何人か行方不明の者もいたな。それはそれは恐ろしい光景であったそうだよ。

アリヤ博士: [無言]

坂凪研儀官: 発見報告から数時間後、蒐集院の顧問官である七哲の??殿が亡くなった。水槽に落下した事による溺死だった。それだけじゃない。全国の支部で研儀官の死が相次いだ。表面上は偶然の事象だという事で処理されたがな。後に亡くなった56人の研儀官は、全員が例の内部調査の申請書に記載された名前と一致している事が分かった。流石にゾッとしたよ。関係無いと分かっていながら、もしかすると私も同じ末路を辿るのでは無いかと正直怯えた。結局は杞憂に終わったがな。

アリヤ博士: その事案によって、SCP-529-JPに関する情報を有する人間は全員死亡したという事ですか?

坂凪研儀官: 恐らくは。そして先程貴殿が話したように、大戦が起こった混乱も相まって〇五二九番の調査はひとまず禁則事項に指定され、現在に至ったという訳だ。

アリヤ博士: 了解しました。ひとまずSCP-529-JP-1に指定されている最奥部の木柱に関しては、財団がこれ以降調査を進める形で対応致します。一応の確認ですが、宜しいですね?

坂凪研儀官: 構わない。

アリヤ博士: それではインタビューを、

坂凪研儀官: 一つ、良いか。

アリヤ博士: はい、何でしょうか?

坂凪研儀官: 〇五二九番の最後の担当研儀官として、所感を伝えておきたい。

アリヤ博士: ……どうぞ。

坂凪研儀官: あの森は、いわゆる禁足地と呼ばれる部類の一つだ。人が立ち入る事を許さない、許されない場所というのがこの国には幾つかある。我々はそれらを長い間管理してきた訳だが、禁足地というものにはある程度の共通点がある。

アリヤ博士: 共通点?

坂凪研儀官: 禁足地と呼ばれる場所は、大概は人間の価値観や畏れから派生して生まれたものだという事だ。

坂凪研儀官: 日本には、森や川などの“大きな力を有する存在”に畏れを見出し、それらを崇め奉る自然信仰、アニミズムの考えが根付いている。ある特定の場所で偶然にも不幸が続いた事を何か大きな力によるものだと考え、既存の価値観に当てはめる事で、禁足地だと定義づけたものが多い。人の先入観が、時に恐ろしい異常性を土地に根付かせるきっかけになったりもする。私はそういった例を幾度も目にしてきた。

アリヤ博士: 何を仰りたいんですか?

坂凪研儀官: 〇五二九番は、そうではない。恐らくあの場所は、人間が生み出した自然への信仰や神道に依らない、もっと根源的な、原初の森の姿なのだ。それこそ人間や他の動物すら異物と見做すほどの。

坂凪研儀官: 人だけでなく動物にも作用する所なんかがまさにそれを表している。自然環境においてそれは異常と呼べるだろう。私も強く感じているとも。だが、正常と異常の線引きなど、あくまで人間が知る認識の上に成り立っているものだとは思わないかね?

坂凪研儀官: もし、この地の最も古き土地がそのままの状態で残っていたとして、外部から未知の生命体が侵入したとしたら、それは土地にとって良いものと見做されるだろうか?私は違うと思う。〇五二九番にとって未知とは、異常とは我らの方なのだ。

坂凪研儀官: 博士殿。努努忘れない様にしてほしい。あの森が我らを迎える事はない。樹木と苔と、そしてそれらを統べ、異物を殺す“何か”のみが存在する事を許されている。

[しばらくの無言]

アリヤ博士: インタビューを終了します。

<記録終了>

補遺2:SCP-529-JPの収容の為、周囲を囲む様に鉄筋コンクリート壁や柵の敷設が進められていた際、SCP-529-JPの中央部から発生した突風によってSCP-529-JP内の木々が揺動する現象が発生しました。

これによりSCP-529-JPの最端に位置する多数の樹木の枝葉が敷設途中だった壁に接触し、結果として壁を建設していた作業員・工事を指揮していた財団職員合わせて212人が偶発的な事象によって死亡しました。以降、SCP-529-JP周辺への人工物の敷設等は禁止されています。

壁に軽く接触しただけで木を傷つけたと判断されるんか・・・

条件厳しいなぁ

補遺3:2008年7月23日、SCP-529-JP-1の調査のため、D-88732にカメラ機能を搭載したゴーグルを装着させSCP-529-JP-1の存在する陸地に上陸する実験が行われました。最奥部に到着したD-88732は過去の対象と同様に不明な実体のイメージをSCP-529-JP-1に重なる様に認めました。担当職員はSCP-529-JP-1に接近するように指示し、詳細の究明を図りました。

結果、池中央部に上陸したD-88732はその場で突如として浮遊し、30秒後に心臓発作によって死亡しました。D-88732は消失直前に「対岸で見えていたものとは違う何かが近づいてくる」という旨の報告を続けていました。

またD-88732の消失後、ライブ映像でこの様子を確認していたSCP-529-JPの担当職員8人全員が19時間以内にそれぞれ異なる偶発的事象により死亡しました。後に映像を確認しようとした職員も同様に死亡した為、該当する映像記録は全て破棄され、以降、池中央部のSCP-529-JP-1が位置する陸地に上陸する試みは禁止されました。

後に行われた小型探査機による内部調査で、SCP-529-JP-1の形状変化が確認されました。新たに観測されたSCP-529-JP-1は概ね鹿や馬に類似する四足獣の胴体の様な形状で、従来の木柱は脚部を構成していました。全長は2.6mで首を含めた頭部や尾は確認されていません。異常な点として、

  • 胴体側面中央に60cm程度の歪な穴が胴体を貫通する形で存在しており、内部には蔓らしき植物で構成された球形の物体が浮遊し常に蠢動している事
  • 本来首の位置する部位から複数の瘤らしき物体が浮き上がっている事
  • 脚部に大きさや虹彩などの特徴が全て異なる総計32個の目が確認され、瞬きと言った運動を行なっている事

が挙げられます。

バケモノいるじゃん!!絶対関わっちゃいけないタイプの生物だよ・・・

また、当事案後にDクラス職員を用いてSCP-529-JP-1の視認調査を行った所、報告された幻覚の形状にSCP-529-JP-1の特徴が反映されている事が判明しました。更に以前は確認されていなかった特徴として、

  • 黒い靄の様な気体が周囲に流出している様に見える事
  • 頭部から菌糸状の触手が複数本生えている事

などが報告されました。当該調査では映像及び写真の撮影も行われそれらは無事回収されましたが、それらにはSCP-529-JP-1を視認した際の異常性が同様に付与されており、該当する媒体を視認した担当職員5人がSCP-???-JPの収容違反に巻き込まれた事により死亡。この事からSCP-529-JP-1は形態の変化と共に異常性が強い物になったと推測されています。これ以降、SCP-529-JP-1の調査には空間認識特化型AIを搭載した財団の小型無人探査機を用いる事が決定されました。

その森は侵入者を粛清する!?絶対に踏み込んではいけない禁足地!!人間だけでなく動物たちにも容赦なく牙を剥いてくるSCP。そこにいるものは古くからこの森を守り続ける守り神なのだろうか・・・

著者 [first man] 原作記事 http://scp-jp.wikidot.com/scp-529-jp

SCP-2025-JP カナリアの啼く時に

オブジェクトクラスSafe

Peter HによるPixabayからの画像

特別収容プロトコル:SCP-2025-JPは財団フロント企業名義で買収し、民間人の立ち入りを禁止しています。SCP-2025-JP内部の調査は無人探査機を使用して行われます。

説明:SCP-2025-JPは???県??山に存在する坑内掘り炭鉱である旧???炭鉱です。SCP-2025-JPは19??年に小規模の炭鉱として開発が開始され、閉山されるまで47年間稼働されていました。

SCP-2025-JPは2000年頃から「カナリアの亡霊がいる炭鉱」として一部オカルトサイトで話題になっており、とあるサイトに投稿されていた映像が財団の注目するところとなり、発見に至りました。

SCP-2025-JP内には常に鳥類の鳴き声(以下、SCP-2025-JP-Aと記載)が発生しています。解析の結果、SCP-2025-JP-Aはカナリア(Serinus canaria)のものであることが判明しています。

これまでの調査において、SCP-2025-JPが稼働していた際、内部にカナリアが持ち込まれた記録は確認されていません。また、これまでの調査においてSCP-2025-JP内にてカナリアや鳥籠等が発見されていない為、SCP-2025-JP-Aの発生源は現在の所不明です。 補遺を参照。

SCP-2025-JP-Aは不定期に消失し、およそ7時間後に再発生するという事象を繰り返しています。SCP-2025-JP-Aが消失した際にSCP-2025-JP内にいる人物は、SCP-2025-JP内にガスが突出し、充満し始めていると認識します。

カナリアって毒ガスに反応する鳥だよね・・・

この認識災害は曝露した人物がSCP-2025-JPから退去することで影響下から脱することが可能であり、クラス3以上の対認識災害措置を行うことで曝露を未然に防ぐことが可能であると判明しています。

上記の認識災害に曝露した人物(以下対象と記載)は曝露から平均10分でめまいや腐卵臭を感じると訴えます。この際、SCP-2025-JP内に硫化水素等のガスが発生した事例は確認されていません。その後対象には嗅覚障害、せん妄、意識レベルの低下などの症状が見られるようになり、最終的に呼吸困難や心肺停止によって死亡します。

対象: SCP-2025-JP
調査担当: D-17458
現場指揮: 車田博士
調査目的: SCP-2025-JP内部状況の把握/異常性の確認

<再生開始>
00:01 [カメラが起動される。映像にはSCP-2025-JPの入り口が映っており、内部からSCP-2025-JP-Aが認められる]

D-17458: なぁ、なんか中から鳥の鳴き声がしてるんだが。

車田博士: それが通常の状態です。それでは内部の調査を開始してください。

D-17458: なるほどな、この鳴き声がこの洞窟のおかしなとこって事か。わかった。んじゃさっそく始めるぜ。

00:15 [D-17458が支給されたライトを点灯し、SCP-2025-JP内に侵入する。内部は稼働時に使用されていた線路や照明等がそのまま残されている]
D-17458: 随分暗いな…。明かりは全部壊れてるのか。

車田博士: D-17458、内部の状況はどうですか?

D-17458: うーん、今んとこ鳴き声以外変わったものはないな。文句があるとすれば、この鳴き声がやかましいのと滅茶苦茶暗いことくらいだな。全く、どこに鳥がいるんだ?さっさと見つけて黙らせねぇと、うるさいったらありゃしねぇ。

車田博士: わかりました。では周囲を撮影しつつ、奥へと進んでください。

D-17458: 了解だ。

D-17458: ふぅ…なぁおい、だいぶ奥まで来たと思うが、今どのあたりなんだ?

車田博士: そうですね…全体のおよそ3分の2程度の地点のようです。

D-17458: マジかよ…まだあと3分の1あんのかよ…。なぁ、やっぱりやらなきゃいけないんだよな?

車田博士: 勿論。それがあなたの仕事ですから。

D-17458: はいはいわかってますよ。まぁ聞かなくてもわかって……。

74:48 [SCP-2025-JP-Aが消失する。直後、D-17458に動揺が見られるようになる]

D-17458: ……おい、鳴き声が止んだぞ。

車田博士: えぇ。こちらでも確認しています。

D-17458: いや、ちょっと待て……思い出したぞ。なぁおい、これあれだろ?毒ガスが漏れだすとカナリアが鳴き止むってやつ。おいおいおい、だとしたらどこかからガスが漏れてんだろ!

車田博士: こちらの計器ではガスは検出されていません。大気の状態は正常です。こちらでガスの発生が確認された場合直ちに撤退を指示しますので、そのまま奥へと進んでください。

D-17458: ほ、本当だな?信じていいんだな?

車田博士: Dクラス職員と言えど、嘘を教えて見殺しにするようなことはしませんよ。

D-17458: は、そうかよ。わかった、あんたを信じて先に進むよ。

83:17: [D-147458が若干の息切れを起こし始め、複数回頭を振り、目をこする動作も確認される]

車田博士: D-17458、どうかしましたか?

D-17458: いや、すまない。疲れきたのか、ちょっと息苦しくてな。あとはなんか目がかすんで……[鼻を鳴らす音] 何だこりゃ?

車田博士: どうかしましたか?

D-17458: いや、何か臭いんだ。なんだろうな…腐った卵?みたいな……。あ、おい!これガスの臭いだろ!なぁおい!そうなんだろ!?

車田博士: いえ、大気に異常は確認されていません。いたって正常です。

D-17458: はぁ?…なぁおい博士、アンタ俺に嘘ついてんだろ?ほんとはあの鳴き声が聞こえなくなった時からずっとガスが出てるってわかってんだろ!なぁ!

車田博士: 私は事実しか伝えていませんよ。ですがそうですね…大体の坑道は調べ終えましたので、今日はここまでにしましょう。体調が回復次第、こちらに戻ってきていただいて構いませんよ。

D-17458: [罵倒] そりゃどうも。じゃあここで一息つかせてもらうぜ。

84:52 [D-17458が壁際に座り、休息を開始する。およそ5分後、D-17458の体調に変化が起きる]

D-17458: [3度鼻を鳴らす音] お、これは…。博士、あの腐った臭いが消えた。体調はまだ戻ってないが、臭い中と臭くない中を歩くんじゃ大違いだ。これからそっちに戻る。

車田博士: わかりました。医療班を入り口に待機させますので、できるだけ速やかに帰還してください。

D-17458: あぁ、そのつもりさ。

88:19 [D-17458の息切れが激しいものになり、不明瞭な呟きやうめき声を繰り返し発するようになる]

車田博士: D-17458、大丈夫ですか?

D-17458: [不明瞭な呟き] あー……あー、えと、は、博士?[咳き込む音] 今、どのへんだ?俺、がここに、は、入ってからどのくら、い経ったんだ?

車田博士: あなたが調査を開始してから約90分経過しています。現在位置は坑道全体の4分の1程度の場所です。大分疲弊しているようですが、休憩しますか?

D-17458: いや、いい。疲れ、てはいるが、違うん、だ。なんだか、あた、頭がぼーっと、してるんだ。なぁ、が、ガスはほんと、うに出てな、いんだな?

車田博士: えぇはい。数値は依然正常なままです。

D-17458: そ、そか。わかった。すぐもど、る。くそ、か、体がお、もい。あぁ…は、はや、くでないと、でない、と…。

95:18 [D-17458が地面にうずくまる。呼吸が浅くなり、意識レベルの低下が見られる]

D-17458: [判別不能]…はか……。いりょ……は…これな…か?

車田博士: D-17458、どうしましたか?

D-17458: [不明瞭な呟き]

車田博士: D-17548?

D-17458: ……えな、い。

車田博士: 何ですって?

D-17548: あ……な…ごえが…。きこ……い…。

[以降4分間、D-17458からの応答はなく、99:36に心拍の停止、死亡を確認。カメラは以後3時間18分間、バッテリーが切れるまで撮影を継続した]

<再生終了>

D-17458の遺体はSCP-2025-JP-Aの再発生が確認された後、回収されました。

補遺:2005年6月18日に行われた定期調査にて、通常とは異なる現象が確認されました。以下はその際の映像記録の抜粋です。

<抜粋開始>

57:27 [探査機がSCP-2025-JP最奥に到達する。周囲に特筆すべきものは確認されない]

57:49 [探査機後方で鳥の羽ばたきのような音が認められる。カメラが音の方向に向けられ、地面に1枚の鳥の羽が落ちていることが確認できる。外見的特徴から、羽はカナリアの物であると推測される。羽は約1.5m感覚で落ちており、探査機がこれを追って移動を開始する]

59:37 [地図上に記載されていない坑道が確認される。羽はこの手前で途切れており、内部からSCP-2025-JP-Aが通常より大きな音量で認められる]

65:26 [探査機が坑道の最奥に到達する。最奥は半径4m程度のドーム状になっており、中央に鳥籠が安置されている。SCP-2025-JP-Aの音量は通常時よりかなり大きなものになっており、このドームが発生源であると推測される]

65:58 [探査機が鳥籠に近づく。鳥籠には何か生物が入れられていた痕跡はなく、特筆すべき点は確認されない]

67:28 [探査機がドーム内を探索し終え、帰還するため坑道の入り口へと方向転換すると、1羽のカナリアが横たわっているのが映り、同時にSCP-2025-JP-Aが消失する。対象は呼吸をしておらず、死亡しているものと推測される]

67:51 [探査機後方から短いカナリアの鳴き声が聞こえる。探査機がカメラをパンすると、鳥籠の周囲に複数のカナリアが横たわっている。先のカナリア同様、全個体が呼吸をしていないことが確認できる]

68:21 [全てのカナリアが目を開き、鳴き声を発し始める。同時に、ドーム内に大量のカナリアが出現する。映像で確認可能なすべての個体が、先ほどまでの個体と同様に鳴き声を発している]

68:27 [探査機が撤退のために入り口へ向かうが、すでに大量のカナリアによって入り口は塞がれている]

69:06 [ドームのおよそ80%がカナリアで埋め尽くされる。画面内に確認できるカナリア全てが探査機を見つめている]

69:34 [ドーム内がカナリアで埋め尽くされ、探査機が操作不能になる]

69:56 [数秒の破壊音の後、探査機との通信が途絶]

<抜粋終了>

通信途絶後、待機していた部隊がSCP-2025-JP内を調査しましたが、映像にて確認された坑道は発見することができず。ドローンの回収も失敗に終わりました。現在、映像にて確認されたドーム状の空間が異常性に何らかの形で関わっていると考えられており、さらなる調査が行われています。

追記(2005/7/19):2005年7月現在、職員がパニック障害に酷似した発作や症状を起こす事例が多発しています。調査の結果、発作を起こした人物の共通点として、SCP-2025-JP報告書を複数回閲覧していたことが確認されました。以下は、当時SCP-2025-JPの管理を担当していた車田博士に対して行われたインタビューの記録です。

対象: 車田博士
インタビュアー: エージェント・横内
実施日時: 2005年7月17日
付記: 車田博士には、インタビュー直前に精神安定剤を投与されています。

<再生開始>

エージェント・横内: 博士、気分はいかがですか?

車田博士: あぁ……薬のおかげで今は大丈夫だ。始めてくれ。

エージェント・横内: わかりました。ではさっそく本題に入りますが、貴方が現在の症状を起こすようになったのは、SCP-2025-JPの報告書を複数回閲覧したから、で間違いでしょうか?

車田博士: 半分正解、と言ったところだな。問題なのはあの報告書そのものじゃない、鳴き声だ。

エージェント・横内: 鳴き声と言いますと、SCP-2025-JP-Aのことでしょうか。

車田博士: あぁそうだ。あれはな、言うなれば絶対的な保障なんだ。

エージェント・横内: 保障?

車田博士: 知っての通りだと思うが、SCP-2025-JP-Aは炭鉱のカナリアと呼ばれるものに酷似している。聞いたことはないかね?

エージェント・横内: えぇ。鉱山や炭鉱にカナリアを連れて行って、カナリアが鳴き止むことで毒ガスの発生を察知する…というものだと記憶しています。

車田博士: そうだ。SCP-2025-JPでは、あの鳴き声が消失することで内部の人間が認識災害に曝露する、それが異常性の全てだと考えられていたんだ。

エージェント・横内: 実際には別に異常性が存在していたと?

車田博士: [頷く] それが今の私の状態さ。SCP-2025-JPが収容されてから、私は何度も調査に立ち会った。現場に行き、ドローンの操作を指示し、何度も何度もあの鳴き声を耳にした。そして気づけば、私は次第にSCP-2025-JP-Aに安心感を覚えるようになっていたんだ。

エージェント・横内: 安心感…ですか。

車田博士: 最初は「あぁ、今日もちゃんと聞こえる」程度だった。だが月日が経つにつれ、あの鳴き声はインクの染みのように私の心にへばりつき、いつの間にか私の中の安心そのものに成り代わっていたんだ。それにつれ、あの鳴き声が聞こえていない時間のほうが異常と思えるようになっていって…勤務時間中や休日も、気が付けばあの鳴き声の事ばかりを考えているんだ。そして私は、あの鳴き声を求めて何度も報告書を閲覧したり、追加の調査を行うようになった。

エージェント・横内: ここ最近の異常とも言えるSCP-2025-JPに対する追加調査の回数はそういうことでしたか。

車田博士: あぁ。だがあの鳴き声は、聴けば聴くに私の体を蝕んでいった。薬物中毒の悪循環と完全に同じだな。だから私は、SCP-2025-JP-Aの音声データをふ、複製してずっと聴いていたんだが、この前の出張の時それをうっかり忘れてし、しまってな…。後は君、が知っての通りというわけだ。

エージェント・横内: そのデータは今どこに?

車田博士: 私の部屋の…デスクの引き出し、の中だ。

エージェント・横内: わかりました。では次にこのオブジェクトの……。

車田博士: [エージェント・横内の言葉を遮り] なぁ、1つ、頼みたい…[うめき声] ことがあるのだが。

[車田博士の体が若干の痙攣をはじめ、呼吸が浅くなる]

エージェント・横内: 博士?大丈夫ですか?

車田博士: た、頼む、あの、あ…あの鳴き声を聞かせてくれ。頼む、お願いだ……。あれがないと私は…私、は……。

[車田博士が頭を抱えた状態で床に倒れ、奇声を発し始める]

エージェント・横内: 博士?大丈夫ですか?聞こえますか?誰か!医療班を呼んでください!

<再生終了>

記録終了後、車田博士には再び鎮静剤が投与され、治療室へと搬送されました。

その後の調査の結果、新たに確認されたこの異常性は記憶処理によって除去することは不可能ですが、曝露者がカナリアの鳴き声を聞くことで症状をある程度緩和させることが可能であることが判明しました。

そのため現在、全てのSCP-2025-JP-A曝露者はサイト-8167内の医療棟第6、第7フロアに収監されており、該当フロアには常に非異常性のカナリアの鳴き声が放送されています。これらの事案を受け、SCP-2025-JP報告書に添付されている全ての映像記録は閲覧が禁止され、SCP-2025-JPに対する定期調査は無期限に凍結されました。現在、SCP-2025-JP-Aに対する更なる調査を行うための実験計画が立案されています。

その鳴き声を聞き続けてはいけない!?聞いた者を蝕むSCP!!カナリアの鳴き声は人々に安心を与えるものですが、このSCPの鳴き声を聞くとその鳴き声なしでは安心できなくなります・・・

著者 [momiji_CoC] 原作記事 http://scp-jp.wikidot.com/scp-2025-jp

SCP-1016-JP 遠吠えの森のマドマゼル

オブジェクトクラスEuclid

jplenioによるPixabayからの画像

特別収容プロトコル:SCP-1016-JPの周囲は、センサー付きの電流フェンスで封鎖されています。セキュリティクリアランス・レベル3/1016-JP以上の職員の指示がない限り、フェンス内部へは立ち入らないで下さい。

機動部隊タウ-4(“王の狩人”)が観測拠点1016-JPに常駐し、定期的な哨戒を行います。センサーの感知範囲に民間人が接近した場合、カバーストーリー「フランス陸軍の演習場」を説明して退去させて下さい。

SCP-1016-JP-1が外部に出ようとした場合、タウ-4隊員がフェンス越しに銃火器による制圧を行います。フェンスが突破される可能性がある場合、フランス国家警察所属エージェントの主導によりカバーストーリー「凶悪犯の潜伏」を展開して周辺住人を避難させ、以降は機動部隊司令部が対応します。

説明:SCP-1016-JPはフランス共和国 アルザス地方 ??????村に位置する総面積約??km2の森林地帯です。内部では常に通信障害が発生します。映像記録は激しいノイズでほぼ判別不能ですが、音声記録は問題なく送受信可能です。

SCP-1016-JP-1はSCP-1016-JP内に出現する自律型実体です。人間に対して敵対的であり、襲撃に遭ったDクラス職員は行方不明になっています。集団で行動し、包囲して退路を塞ぐ等の連携を見せることが確認されています。

タウ-4偵察班による第2回調査では銃火器が有効であることが判明しており、銃弾が命中した個体が黒い気体を発して消滅する様子が確認されています。現時点ではSCP-1016-JP外に出ようとした事例はありません。

銃は一応有効なんだ。SCPにしては珍しいな。

SCP-1016-JP内部には大規模な邸宅の廃墟が存在します(来歴は補遺参照)。タウ-4偵察班の報告によると、敷地面積は約350m2、2階建て、部屋数は約20部屋です。随所に赤い塗料で数字が書かれていますが、他の調度品に比べ塗料の状態が新しいことから、これらは後から書き加えられたものと考えられています。

SCP-1016-JP-2は廃墟内で確認されている自律型実体です。人間に対して敵対的であり、遭遇したタウ-4偵察班は全員が行方不明になっています。

アサルトライフルによる射撃を数十秒持続しても効果がなかったことから、通常火器による撃退は困難と判断されています。この結果を考慮し、廃墟の再調査は保留中です。現時点では廃墟外に出ようとした例はありません。

やっぱり効かないやつもいますよねぇ・・・

SCP-1016-JPの発見の切掛けとなったのは、ストラスブール大学の学生?????・????氏の行方不明事件でした。フランス国家警察が????氏のルームメイトから聴取を行ったところ、卒業論文の取材のためにSCP-1016-JPを訪れる予定であったことが判明しました。

その後、原理不明の通信障害の存在が判明、SCP事案の可能性が浮上したため財団が調査を引き継ぎました。????氏の消息は現在も判明しておらず、フランス国家警察、および????氏の関係者にはB~Cクラス記憶処理、およびカバーストーリー「遭難事故死」が適応されました。

補遺:以下はSCP-1016-JPに関連する可能性がある情報一覧です。より詳細な内容は別紙SCP-1016-JP関連情報調査報告書を参照して下さい。

現地調査員: D-5129

調査本部オペレーター: シュライバー博士(当事案研究主任)

〈前略〉

※D-5129、SCP-1016-JP内に侵入(15:07:32)

シュライバー博士: 何か変わった点はありませんか?(15:07:40)

D-5129: いや、別にないが、暗くて薄気味悪い森だなあ。あ、細いけど、獣道みたいなものがあるな。これに沿って進めばいいか?(15:07:44)

シュライバー博士: ルートはお任せします。(15:07:53)

D-5129: 了解。(15:07:58)

〈中略〉

※通信障害発生。(15:33:32)

シュライバー博士: 映像は駄目ですね。音声はどうですか?(15:33:41)

D-5129: 多少ノイズが混じるが、何とか。(15:33:45)

〈中略〉

D-5129: 静かだな。風と葉擦れの音以外、何も聞こえない。まるで、この世に俺しかいないみたいだ。それなのに[沈黙] (15:41:08)

シュライバー博士: どうしました?(15:41:16)

D-5129: いや、何でもない。(15:41:19)

〈中略〉

D-5129: 何だか、変な感じだ。周りの木がどんどん高くなって、逆に自分が縮んでいくような。もう何日も歩き続けているような。同じような景色がずっと続くせいかな。(15:53:00)

シュライバー博士: DSD5? やはり、この森自体が異常空間と考えるべきかしら。(15:53:09)

D-5129: 何だって?(15:53:15)

シュライバー博士: いえ、お気になさらず。参考になりますので、感じたことは積極的に仰って下さい。(15:53:23)

D-5129: そ、そうか? じゃあ、言うけどよ。どうも、さっきから見られているような。(15:53:31)

シュライバー博士: 見られている? 誰にですか。(15:53:36)

D-5129: いや、誰にとか、どこからとかじゃなくて。その、強いて言うなら、森そのものが。(15:53:40)

[犬の遠吠えのような音声] (15:53:49)

シュライバー博士: 今の音声は何ですか?(15:53:55)

D-5129: 木の陰に何かいる。真っ黒な、犬? い、いや、犬にしちゃ、何か。(15:54:01)

[植物を掻き分ける音声] (15:54:05)

D-5129: [驚きの声]た、たくさんいる! みんな、こっちを見てる。(15:54:09)

シュライバー博士: 調査中止。帰還を許可します。(15:54:12)

D-5129: だ、だめだ、囲まれた!(15:54:16)

[複数の犬の吠え声のような音声] (15:54:20)

D-5129: [早い足音]い、家がある! あそこへ逃げ込めば、うわっ[転倒音]く、来るな! 助け[悲鳴]ち、違う! こいつら、犬なんかじゃない! [数秒沈黙]な、何だって? し、知らねえよ、そんな奴。(15:54:22)

シュライバー博士: 誰と会話しているのですか?(15:54:33)

D-5129: 何しやがる! や、やめろ、やめてく[絶叫]た、助け[咀嚼音らしき音声]す、すげえ、こんな、こんな気持ちい、ひひ[ヒステリックな笑い声]俺、森に、食われ。(15:54:37)

シュライバー博士: D-5129、応答して下さい。(15:55:48)

※ごく短時間、映像のノイズが止み、D-5129のカメラが右画像を撮影。(15:55:52)

D-5129: 狼、さん。もっと、食べ。(15:55:53)

[犬の遠吠えのような音声] (15:55:59)

※通信中断。(15:56:50)

付記: D-5129が遭遇した実体はSCP-1016-JP-1にナンバリングされました。
現地調査員: タウ-4偵察班、アルファ(班長)、ブラボー、チャーリー

調査本部オペレーター: シュライバー博士

〈前略〉

※タウ-4偵察班、SCP-1016-JP内に侵入(15:02:13)

〈中略〉

アルファ: アルファより調査本部へ。事前情報にあった邸宅が見えてきた。仰々しい造りだな。ゴシック様式って奴か? あと数分で到着するだろう。(15:14:45)

※ごく短時間、映像のノイズが止み、アルファのカメラが邸宅廃墟を撮影。(15:14:50)

シュライバー博士: あっ、一瞬だけ映りましたね。人は住んでいそうですか?(15:14:52)

アルファ: いや、窓は割れているし、見るからに廃墟だな。(15:14:58)

[複数のSCP-1016-JP-1の鳴き声] (15:15:33)

アルファ: 来たな。よし、交戦開始。(15:15:36)

※タウ-4偵察班、SCP-1016-JP-1群に向けて発砲

シュライバー博士: 効果はありましたか?(15:16:07)

アルファ: ああ、撃たれると、黒い霧みたいになって消える。少なくとも、犬ではないな。(15:16:11)

[複数の植物を掻き分ける音声] (15:16:15)

ブラボー: 班長、どんどん集まってきますよ。(15:16:19)

アルファ: キリがないな。威嚇射撃しながら、廃墟に向かう。(15:16:24)

〈中略〉

アルファ: 廃墟に到着した。鍵は掛かっていないな。(15:25:33)

シュライバー博士: -1群はどうしていますか?(15:25:38)

アルファ: 遠巻きに見ているだけだな。威嚇射撃が効いたのか?(15:25:43)

チャーリー: 班長、ヒューム値は正常値よ。(15:25:48)

アルファ: いきなり、チョコに変えられたりはしなさそうだな。よし、探索を開始する。(15:25:53)

〈中略〉

※タウ-4偵察班、廃墟を探索。説明欄の情報が判明。定期的に窓から観測するが、SCP-1016-JP-1群は接近する様子なし。

〈中略〉

アルファ: ん? これは。(15:56:33)

シュライバー博士: 何かありました?(15:56:36)

アルファ: 赤い塗料で壁に"5"と書かれている。色褪せしていないし、古いものじゃなさそうだが。(15:56:40)

〈中略〉

ブラボー: こ、これは! まだ残ってたのか。(15:58:01)

シュライバー博士: どうしました? まさか。(15:58:06)

ブラボー: そのまさかですよ! ボナールの絵に間違いありません! いやあ、すごい迫力だなあ。(15:58:10)

アルファ: ブラボー、報告は客観的に。とは言え、確かに画風は似ているようだ。暗い洞窟のような場所で、全身にバラの花を絡ませた少女が、大きな犬を撫でている絵だ。タイトルは"猟犬を愛でる冥界の女神"か。(15:58:21)

シュライバー博士: ふむ、どうしてその絵だけが残されていたのか。持ち帰れそうですか?(15:58:33)

アルファ: 60号6ぐらいあるし、難しいな。おや?(15:58:38)

シュライバー博士: どうしました?(15:58:43)

アルファ: 絵の横に"4"と書かれている。おそらく、さっきと同じ塗料かと。(15:58:45)

〈中略〉

チャーリー: ボロボロの服が一杯、衣装部屋かしら。この毛皮のコート、まだ着られそうね。あ、やっぱりいいわ。(16:10:11)

シュライバー博士: 好みじゃなかった?(16:10:16)

チャーリー: いえ、裏地にでかでかと"3"って書いてあるのよ。勿体無いわね。(16:10:21)

〈中略〉

ブラボー: アトリエのようです。パレットに絵の具がそのまま残っています。隠居した後も、描き続けていたんでしょうか。おや、これは。(16:15:14)

アルファ: 待った待った、乱暴に扱うと崩れるぞ。ああ、すまん。机の上に手紙があった。"フランソワ・ボナール様へ、先日お贈りしたラファエロの創造の筆はお気に召して頂けたでしょうか。貴方様の作品に、私たちは芸術の向こうの真理を見たのです。貴方様こそかの筆の持ち主に相応しい、貴方様こそ優れたる人の芸術の担い手であると、全ての貴族たちは確信し……"ここから先は損傷が激しくて読めないが、最後の方に印章が押されているな

シュライバー博士: それは……。(16:16:32)

アルファ: 心当たりがあるのか? まあ、無理には聞かないが。(16:16:35)

ブラボー: あ、また数字があります。椅子に"2"と。(16:16:41)

〈中略〉

アルファ: 地下のボイラー室のようだが、老朽化が激しいな。(16:20:45)

チャーリー: [罵声]!(16:20:51)

シュライバー博士: どうしました?(16:20:53)

チャーリー: 瓦礫を退けたら、その下に"1"よ。馬鹿にしてるわね。(16:20:55)

シュライバー博士: その数字、偶然だと思いますか? 発見順も含めて。(16:21:01)

アルファ: 偶然と言いたいところだが、こんな所だからな。(16:21:10)

[若年女性の笑い声のような音声] (16:21:24)

アルファ: 追うぞ!(16:21:25)

※タウ-4偵察班、音声の発生源を捜索するため、玄関ホールに移動。

アルファ: くそっ、確かに、こっちから聞こえたはず[驚く様子]。(16:22:13)

シュライバー博士: どうしました?(16:22:17)

アルファ: 玄関のドアに"0"と。こんなもの、入った時は書かれてなかったぞ!(16:22:19)

[若年女性のけたたましい笑い声のような音声、およびブラボーの悲鳴] (16:22:20)

チャーリー: ルーク!(16:22:21)

アルファ: 交戦開始!(16:22:22)

[連続した銃声] (16:22:23)

アルファ: すまん、こいつの説明は後だ!(16:22:25)

[チャーリーの悲鳴] (16:22:35)

シュライバー博士: 班長、撤退して下さい!(16:22:37)

アルファ: ルークがやられ[ノイズ] 、セシルも[ノイズ]、博士、ここには誰も寄越すな! ここは、こいつの[銃声が途絶える]。あ、ああ、このお方の。(16:22:40)

シュライバー博士: ロア……班長、応答して下さい!(16:22:59)

※ごく短時間、映像のノイズが止み、アルファのカメラが右画像を撮影。(16:23:05)

アルファ: [アサルトライフルの落下音]お嬢様。お美しい、お嬢様。(16:23:07)

[若年女性の笑い声のような音声] (16:23:13)

※通信中断。(16:23:16)

付記: タウ-4偵察班が遭遇した実体はSCP-1016-JP-2にナンバリングされました。

機動部隊ですら相手にならない何かがいるのか・・・

しかもお嬢様とは一体・・・

??/??、18:09、?????氏の生還が確認されました。SCP-1016-JPから歩み出てきたところを、哨戒中のタウ-4隊員に保護され、サイト-????の隔離病棟に移送されました。各種検査や諜報局による捜査により、間違いなく本人であることが判明しています。肉体的には問題なく、精神状態も明瞭であったため、翌日より聴取を開始しました。

〈前略〉

シュライバー博士: ?????さん、あなたは卒業論文の取材のために、あの森へ行ったそうですね。(14:09:02)

?????氏: はい、初めは村の人たちから話を聞いていただけだったんですが、何とあのボナールの邸宅跡があると言うじゃないですか。あ、この名前ご存知ですか?(14:09:09)

シュライバー博士: ええ、一応。一般の知名度は高くないと思っていましたが。(14:09:19)

?????氏: いえ、その、祖父からよく聞かされていたんです。我が家はボナールの遠縁なんだって。まあ、眉唾だとは思っていましたが、証拠でも見つかれば面白いかなと思って。細いけど獣道らしきものもあったし、外れなければ大丈夫そうだったので。ところが、森に入ってしばらくして、その[口ごもる]。(14:09:24)

シュライバー博士: 何があったのですか?(14:09:47)

?????氏: 野犬、そう、野犬の群れに襲われたんです! 来た道は奴らに塞がれていたので、森の奥へと逃げざるを得ませんでした。十数分ぐらい走り続けた頃だったでしょうか。噂の邸宅が見えて来ました。扉に鍵は掛かっていなかったので、僕は夢中で逃げ込みました。(14:09:52)

シュライバー博士: それは災難でしたね。(14:10:08)

?????氏: ええ、死ぬかと思いましたよ。犬も野生化すると、あんなに凶暴になるんですねえ。[小声で]そう、犬だ、犬だったんだ。(14:10:11)

シュライバー博士: ?????さん?(14:10:20)

?????氏: い、いえ、それでとりあえずは助かったんですが、スマホは圏外だし、外にはまだ野犬がうろついているし、途方に暮れましたよ。でも、まあ、ここに来ていることは村の人たちも知っているし、その内助けが来るだろうと気楽に構えまして。せっかくだから、それまで取材しようと邸宅を歩き回ってみたんです。(14:10:22)

シュライバー博士: 中はどんな様子でした?(14:10:49)

※タウ-4偵察班の報告とほぼ同じ内容のため省略。

?????氏: 多分、ダイニングルームでしょうか。壁に"5"と大きく書かれていたんです。真っ赤な染料で、気持ち悪かったですね。(14:21:42)

※?????氏、邸宅廃墟の各所で数字を発見したと証言、タウ-4偵察班と同様、大きい順に発見している。ただし、書かれていた場所は、タウ-4偵察班の報告とは全て異なっていた。

?????氏: [低い声で] "3"を見た頃からでしょうか、ずっと誰かに見られているような気がしてきて。その時、ふっと妙な考えが浮かんだんです。(14:23:18)

シュライバー博士: 妙な考え?(14:23:38)

?????氏: この数字は、カウントダウンじゃないのかと。そうしたら、今度は"2"と書いてあるのを見つけて、その、玄関の扉に。(14:23:43)

シュライバー博士: 入った時に確認はしましたか?(14:23:55)

?????氏: [興奮した様子で]はい、その時は、絶対にあんなものは書いてありませんでした! それで、猛烈に怖くなって、思わず邸宅から飛び出そうして。でも、外にはおおか、い、いや、野犬の群れがいることを思い出して。(14:24:01)

シュライバー博士: それで、邸宅内に留まったんですか?(14:24:20)

?????氏: え、ええ、じっとしていれば、これ以上、あの数字を見ないで済むと思って。なのに、ふと鏡を見たら、か、書いてあったんです! "1"と、ぼ、僕の額に! 真っ赤な数字が!(14:24:24)

シュライバー博士: ?????さん、落ち着いて下さい。ここは安全ですよ。(14:24:37)

?????氏: [PTSDによるフラッシュバックを発症しているものと推測]そ、そうだ、こうすれば[目を閉じる]見えない、何も見え[激しく頭を振る]だ、だめだ、0が、真っ赤な0が、まぶたの裏に! (14:24:42)

※シュライバー博士、医療スタッフをコール。

?????氏: 逃げなきゃ、ここから。ああ、でも、外には野犬[頭を抱えて]ああ、違う、犬なんかじゃない! だって、あいつらは、はっきり喋った! 待ってた、お前は血族の一員だって! 嫌だ、あいつらの仲間になんか! ああ、でも、ここに居たら、ああ、どうしたら!(14:24:49)

※医療スタッフ、?????氏に鎮静剤を投与。

シュライバー博士: 今日はここまでにしておきましょうか?(14:30:09)

?????氏: [鎮静剤の作用でやや朦朧とした様子で]ああ、いえ、取り乱してすいませんでした。もう、大丈夫です。あの時も、こんな感じだったんでしょうねぇ。ええと、どこまでお話しましたっけ。(14:30:14)

シュライバー博士: 玄関の扉の前で。(14:30:29)

?????氏: ああ、そうでしたね。扉の前で、にっちもさっちも行かなくなって、多分、そのまま眠ってしまったんでしょう。妙な夢を見ました。(14:30:33)

シュライバー博士: 夢ですか?(14:30:44)

?????氏: ええ、あの邸宅の中にいるようでした。でも、現実の邸宅と違って、床も壁もピカピカでした。それでいて、何倍も禍々しい雰囲気を漂わせているんです。そして、僕の目の前に[数秒沈黙]お嬢様がいらっしゃいました。(14:30:46)

シュライバー博士: お嬢様?(14:31:07)

?????氏: ええ、あの館の主ですよ。愛らしいお声でころころとお笑いになって「館には居たくない、森にも出たくないと申すか。ならば、庭先で犬として飼ってやろう」と仰いました。そして僕は、首輪をはめられ、庭の木に鎖で繋がれるんです。あ、夢の話なんて、無用ですか?(14:31:09)

シュライバー博士: いえ、お続け下さい。診断の材料になりますので。(14:31:34)

?????氏: [ため息]いやあ、惨めだったなぁ。毎日、お嬢様に鎖で引かれて散歩させられ、食事も犬みたいな姿勢でさせられて。そうそう、かくれんぼもやらされましたっけ。「5つ数える間に隠れろ」と言われて、必死で隠れるんですが、毎回すぐに見つかってしまって、その度にひどいお仕置きをされて。

でも、何より惨めだったのは、森の狼どもに馬鹿にされることです。ひそひそと「あいつは飼い犬だ」「あの男と同じだ」「血族の面汚しめ」なんて囁きが聞こえてきて。こんな境遇に落とされるなら、死んだ方がましだったと思ったところで、目が覚めました。(14:31:40)

シュライバー博士: その時は、どんな状態でした?(14:32:25)

?????氏: 森の入口付近に倒れていました。そして、ふらふら歩き回っていたところを、あの特殊部隊みたいなお兄さんたちに助けられた次第で。ああ、ひょっとしたら、野犬の群れも、お嬢様も、全部夢だったのかもしれませんねぇ。[数秒沈黙]でもね、先生。(14:32:31)

シュライバー博士: 何でしょう。(14:32:48)

?????氏: 今思えば、犬の暮らしも悪くなかったなあって思うんですよ。仕事の心配はしなくていいし、狼に馬鹿にされるのも慣れてきたし、何よりお美しいお嬢様に可愛がってもらえるなら。[ため息]お嬢様、どうして僕を帰されたのかなぁ。(14:32:53)

聴取が完了次第、?????氏には適切な記憶処理が施され、カバーストーリーを「遭難からの生還」に変更、社会復帰支援が行われる予定です。

凶暴な犬のような何かが住み着く森!?さらにその先の屋敷の中にも「お嬢様」が暮らしている。お嬢様に見つかると犬にされてしまう。 ?????氏が帰還したのは機動部隊が彼の代わりに犬になったのでは・・・?

著者 [ykamikura] 原作記事 http://scp-jp.wikidot.com/scp-1016-jp

終わり

Antony TrivetによるPixabayからの画像

今回は人間が踏み込んではいけない恐ろしいSCPを3体紹介しました。どのSCPも侵入したら帰ってこれるかわからないものばかりです!特に遠吠えの森のマドマゼルは謎解き要素があるので記事をよく読めば真相がわかるかも・・・?原作記事が気になったら是非読んでみてください!!

この記事はCC BY-SA 3.0ライセンスに基づきます。

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