些細なきっかけで堕ちていく 悪い夏【著者 染井 為人】を読んでみた感想【ネタバレ含みます】

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こんにちは!!今回は第37回横溝正史ミステリ大賞優秀賞受賞作【悪い夏】についてレビューしたいと思います。ネタバレも含みますのでご注意ください。

物語

26歳のは地方都市の社会福祉事務所で、生活保護受給者(ケース)のもとを回るケースワーカーとして働いていた。曲者ぞろいのケースを相手に忙殺されていたその夏、は同僚が生活保護の打ち切りをチラつかせ、ケースである22歳の女性に肉体関係を迫っていることを知る。真相を確かめるためには女性のもとを訪ねるが、やがて脅迫事件は形を変え、社会のドン底で暮らす人々を巻き込んでいく。生活保護を不正受給する小悪党、貧困にあえぐシングルマザー、東京進出をもくろむ地方ヤクザ。負のスパイラルは加速し、ついには凄絶な悲劇へと突き進む――。

感想

 真面目が取り柄でそれ以外の特徴も無いごく普通の公務員の転落していく姿がとても印象的で、どんな人でも自身の行動周りの環境や周囲の人間、そしてほんの些細なきっかけで簡単に日常が崩壊すると考えさせられる物語でした。

 からしたら幸せになっていく途中からの転落。読者の私たちからの視点では進んではいけない道だとわかりますが、視点ではそんなことはわかるはずもなくどんどんと状況が悪くなる。まさに絶望。読めば読むほど胸が苦しくなる。だけどページを捲りたくなる。

 特に衝撃的だったのは貧しいシングルマザーである古川佳澄が亡くなった時、転落していってるによって彼女と子供は生活保護が貰えずに亡くなってしまった。本来は正しく支給される資格があるであろう親子がもらえず、不正に生活保護を受けている者が甘い蜜を吸う。元々のが1番許したくない状況のはずなのに。不幸の連鎖が読んでいてとても辛いものでした。

 登場人物は全員クズとワル、いや、頭の回る悪人壊れた善人というべきか。の同僚でしっかりした性格の宮田有子を助けてくれないかと期待してましたが、彼女も狂っていて狂った歯車のギアの1つだったんだ、この物語に救いは無いのだと感じました。

まとめ

 生活保護という難しい問題を題材にした小説で生活保護に不正受給があることと本当に必要な人へ受給が行われていない現状のようなものが見えました。
 地方ヤクザが言ったセリフ「一生懸命働いているのに生活保護世帯よりも安い賃金しか払えない社会はおかしい」「底辺はこぞって生活保護を申請すべき。ソレが国民としての当然の権利で矛盾したシステムを作った国に対する一番の圧力になるんだ」これを著者は伝えたかったのかなと思いました。

終わり

 人によっては読み続けることはできないんじゃ無いかと思うほど悲しくて苦しい物語ですが、引き込まれる面白い小説でした。生活保護という身近な話題と登場人物の心情が本当の人間らしさがあったからかなと思います。
 次もまたサスペンス小説読んでみようかな〜。

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