格好いいDクラス職員!?Dクラス職員がめっちゃ活躍したSCP記事3選!!

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不思議で怖くておもしろい、そんなSCPを紹介していきたいと思います!!

いつも使い捨て同然に扱われるDクラス職員ですが、今回は最高にかっこいいDクラス職員が活躍するSCP記事を紹介していきたいと思います!!

Anh Lê khắcによるPixabayからの画像

SCPとは

SCPとは常識に反した超常的な存在です。生物に限らず物や場所などのことを指すことがあります。それらを確保、収容、保護することを目的としているのがSCP財団です。

SCPには収容難易度によってランクづけされておりオブジェクトクラスと言われています。

Safe(セーフ)
 注意して収容しとけばそんなに危険じゃないよ!

Euclid(ユークリッド)
 よくわからないことが多くて危険だよ!収容が難しいかも・・・?

Keter(ケテル)
 収容することができない!なかには人類への壊滅的な危機または世界が終わる危険性があるよ!!

主にこの3種類に分類されてます。

SCP-1983 先のない扉

オブジェクトクラス;Keter

PexelsによるPixabayからの画像

SCP-1983-1はワイオミング州にある平屋の農家です。

“悪魔的”カルトによるものと伝えられる連続した儀式的殺人の後、1968年に廃屋となりました。

SCP-1983-1の正面玄関を開くと、内部に異空間があります。

SCP-1983-2の事例を除き、戸口から物質や光が出ていることは観測されていません(ただし異空間は熱を発しています)。

SCP-1983-1には、窓や裏口や裏の壁の裂け目といった他の入り口から侵入可能です。

しかし、SCP-1983-1内部に居間は存在しないようです。居間に通じるはずのドアは、建物内の他のドアに通じています。

SCP-1983-1の内部と外部の寸法は一致しません。SCP-1983-1内部の壁に居間に通じるように穴を開けると代わりにSCP-1983-1正面の外壁に通じますが、戸口の左右3mで止まります。

SCP-1983-1の外壁から居間に向かって穴を開ける実験が行われたところより小さな異空間が出現しましたが、それらからSCP-1983-2が出現する事例は観測されていません。

SCP-1983-2の出現可能性を増大させる恐れから、これ以上壁を壊すことは禁止されています。

SCP-1983-2はおよそ1.8mの二足歩行の生き物です。彼らは全身が黒く人型のような見た目をしています。

彼らは非常に気性が荒く、人間に直ちに襲いかかります。SCP-1983-2は人間と接触すると肌や組織に傷を付けずに人間の胸腔に上肢を入れ、未知の方法で心臓を引き抜き人間を殺害します。一旦心臓を引き抜くとSCP-1983-2はSCP-1983-1へと戻ります。

積極的に人間攻撃してくるの!?絶対近づかないほうがいいじゃん!!

SCP-1983-2は祈りを受けた銀の弾丸でのみ殺せます。

正式な祈りや信者の祈りではなく、心を込めて祈ることが重要です。

SCP-1983-2は殺されると小さな硫黄の跡を残し”蒸発”します。

SCP-1983は周辺で発生した不可解な死の事件の後発見されました。財団調査員はSCP-1983-2の後を追いSCP-1983-1を見つけることができました。

補遺1:機動部隊Chi-13の1部隊を怪奇現象の調査のため戸口から内部へと派遣。帰還せず。しかし、彼らが入室するとすぐに正面入口のドアが出現し、彼らを異空間に閉じこめる。SCP-1983-2は出現せず。

補遺2:第一急襲部隊の安否を確かめるため第二急襲部隊がSCP-1983-1に侵入。帰還せず。扉は閉まらなかった。SCP-1983-2が現れたためエージェントモーリスが戸口に入り、直後に扉が閉まる。

補遺3:1989年5月23日、D-14134は、25mのコードで外部と接続された有線式テレビカメラを渡される。彼は可能な限りの内部調査と帰還を命じられる。一度戸口を過ぎるとカメラの映像は遮断。コードはぴんと張り詰めたかと思うと、パチンと音を立て切断される。

数時間後、SCP-1983-1の怪奇現象が消失する。中には数人のエージェントの干からびた死体があり、当該SCPについてまとめられたとみられる非公式のレポート、文書1983-15が発見される。内容は以下の通り:

アイテム番号: わかんねえ
オブジェクトクラス: Keter。かわいそうに。
特別収容プロトコル: アンタは死ぬよ、残念だけど。
これは脅しじゃねえ。オレはエージェントバークレー。オレはこの呪いの中にいて、アンタに話してる、アンタもここに来たのか?アンタ死ぬよ。オレはすでに死んでるだろうけどな。
だから出れねえ。さっさと封印しな。方法は唯一つ。呪われた扉を閉めることだ。その扉を通っても戻れねえからな。まあ、もう試してるか。だけどヤツらは本気になれば外に出られる。そのせいでオレらはこのクソッタレな場所を見つけちまったんだからな。
アンタがもう扉を閉めてくれてるといいんだがな。オレらはもう閉めた。外に出るのは諦めたんだ。まだやってねえなら、まっすぐ戻って扉を閉じな。それが今、アンタがやる唯一つのことだ。なんにせよ、アンタは死ぬ。死ぬ前になんかイイことしときな。
説明:んで、ここから説明だ、もう知ってるかもな。財団はアメリカのど田舎で問題が起きたと知らされる。牛や野生生物が変死したんだと。行方不明者の数は増えるばかり。見つかっても心臓が無くなった死体で見つかる。切ったり、裂かれた痕もなくな。胸の真ん中がカラなんだと。
ヤツらは真っ黒いカスみたいなのが浮かんでるのを見つける。似たようなヤツを見たことがある財団の秀才野郎が、殺し方を発見した。神に祈りを捧げた銀の弾丸をぶち込めばいいってな。文字通りにな。なんでかは知らんが、それでうまく行く。どの神かは関係ねえ、アンタが心を込めたかが重要だ。
オレにはもうできねえがな。巣を見ちまったからな。
とにかく、財団はアレがすべてどこから来んのかわかってる。村の真ん中にある、なんかの家だ。殺人やらカルトやら儀式やらうわ言喚くやらなんやらあって以来そこには何年も空き家だ。肝心なのは、ここの玄関からヤツらが出続けてるってことだ。部隊がそんなか入っていったが誰も帰ってきやしねえ。でも、バケモンも出てこなくなった。正気な奴ならこう言うだろう。十分だ、目を離すな、少しでも動くものがあれば殺せ。だけど、これがこの財団だ。
アンタはどの糞部隊のタフ野郎だ。スクェーレ・ノースか、オレみたいに聖歌隊か。アンタは扉をぶっ壊して中に入る、それだけ。そしたら終わりだ。
居間は最悪だ。そこはオブライエンが捕まった場所だ。捕まるとアイツは突然ぶっ倒れ、ヤツらの一人が心臓を取ったんだよ・・・爪で、だったかな?
ヤツらはここでは不明瞭だ。もう気づいてるだろうが。ヤツらは影みたいなもんだ。光から離れろ。バカみたいな話だけど、そうしろ。光の中で、影は強くなる。ヤツらは輪郭を持つ。暗闇ではヤツらは不明瞭になる。ヤツらはアンタにほとんど触れられないし、見ることもできない。オレはヤツらは影を見てるんだと思う。わからねえが。正直なところ、ここじゃ藁にも縋りてえ。
アンタはもう扉で戻ろうとしただろうな、だけどできねえ。それはもっと最悪な場所につながってる。そこにバケモンはいない、だけど…外に出て家から離れたジョーンズは、信じられねえかもしれないが、溶けた。アイツの身体から何かがはじけだして、そして…。アイツが戻って来なかったってことよく覚えておきな。そして、オレらは扉を閉めた。
それで、オレらは家の中を動き始めた。気づくまでオレらは光を点け続けた。3人がそれで殺られたが、おかげで周囲を良く観察することはできた。
ここがどこかって?でかい。ただの農家じゃねえ。ここは…ここはまるでいろいろな場所をかき集めて継ぎ合わせたようなとこだ。アパートみてえなとこもあればショッピングモールみてえなとこもある、信じちゃもらえないかもしれんが、オレの高校のロッカーまでありやがった。タイルも何もかも同じやつだった。
ほかにはなんでできてたと思う…ごみだ。それは黒く、影みたいで、ほとんどが光りに照らされていた。明かりが消えれば、アンタも手を入れられる。止めといたほうがいいがな。それでトレスは消えた。なんかがアイツを捕まえると、引っ張られていった。穴は小さかったが、それでもアイツは引っ張られていった。
だから、光は避けろ、暗闇で足元を見続けろ。
もちろん、脱出はできねえ。オレらもそれは理解した。アンタが見つける扉はこのキチガイ病院の別の部屋に着くか、外に出るかだ。ようやくオレらは死ぬんだとわかった。そう、ここじゃ餓死するか、ヤツらに捕まるかしかねえ。感動的な選択だよなあ、ええ?
ここでアンタがやることは一つだ。オレはやりきれなかったが、アンタはできるかもな。それをしてもアンタが生き残れるとは思わねえ…でも大事なことだ。誰かがやってくんなかったら、ヤツらはいつか外に出てくる。間違いなく。
ここは色々な場所を奪い取ってできたものだ。それで、オレはこう考えてる。ここにはまだ他に扉が存在するに違いないと。オレらは見つけた扉をすべて閉じきった。だけど、また扉が開いたら?そのとき財団がヤツらを見つけられなかったら?クソが、あいつらは扉を閉めることすら知らねえんだ。また誰かこの中に入ればヤツらを止められるってことに気づいてくれるのを願ってる。もっとも、入ったヤツがみんな扉を閉めるくらいには頭が回るって仮定の話だがな。
そうか、オレはこれを止める方法を見つけたと思う。それは巣だ。
オレは一度だけ、2, 3分見ることができた。デニングの心臓を抜き取ったクソ野郎をオレらは追った。オレはこの部屋がすべての中央にあるんだと思う。それは真っ黒で、どんな灯りも吸い込むことができるんだと思う。ランプ、懐中電灯、ロウソクなんかもな。他のヤツらも運んでいったのをオレらは見た。とにかく、中央にたくさんの心臓でできた塊がある。心臓はどれもこれも山に投げ込まれて、引き裂かれてた。ヤツらはデニングの心臓を放り込むと、それは鼓動し、脈打ち、のたうちまわった。それから引き裂かれて、心臓を一つ引きぬいた。それは震えて、成長し、動き始めた。塊がバラバラになっても心臓は鼓動し続けた。オレの胸も疼くのを感じた。
そこは影の集まり。バケモンってことじゃねえ、本当の人間の影の集まりだ。人間から伸びてる影は一つもない。影は心臓から伸びていた。そして、新しい影が現れると同時にバケモンが産まれた。影の奴は心臓から離れようとしていたが、離れられなかった。
オレは逃げた。オレは耐えられなかった、分かるか?オレはこのクソッタレな状況に対処する訓練なんて受けてねえ。オレの後ろでなにか聞こえた。それがオレを呼び止める仲間の声なのか、バケモンがオレらを見つけた音なのかわからないが、オレは皆と別れた。オレは隠れるのにちょうどいいクローゼットを見つけ、それ以来ずっと隠れ続けている。オレはこれをペンライトで書いている。ヤツらが近づく音が聞こえたら、オフにしてる。今の所、このやり方で上手くいっている。
オレはここから動けない。オレの銃には弾が少し残ってるが、意味なんてねえ。もう祈れない。巣を見ちまった。だけど、アンタ、これをアンタが見つけたら、オレに代わって、やり遂げてくれ。多分、アンタはオレよりも強い。決心がついたら、巣に行ってぶち壊してくれ。すべての心臓をぶっ壊すんだ。そしたら、ヤツらを殺せるかもしれねぇ。これがオレが考えられる唯一の方法だ。アンタは死ぬだろう、でも何やってもここじゃ死ぬんだ。だからなんの問題もないだろ?
オレ、オレはこれから居間へ向かう。アンタがこれを見つけてくれることを祈って。もちろん、オレの心臓はヤツらに使わせない。
幸運を。死にゆく者より敬礼を。

未知の方法で心臓を抜かれる!?入ったら出ることはできないSCP!!このメモを読んだD-14134はドアを全て閉めているのか、はたまたSCP-1983の巣を破壊したのか・・・?

著者 [DrEverettMann] 原作記事 http://www.scp-wiki.net/scp-1983

SCP-213-JP 監獄行きのクライスター

オブジェクトクラス:Safe

Kim DongukによるPixabayからの画像

SCP-213-JPはその後部トランクに異常性を持つクライスラー社製のセダン、クライスラー・300Cです。

SCP-213-JPの後部トランク以外は、通常のクライスラー・300Cのものと性能的な差異は全くありません。

しかし、後部トランクを開け、その中に物体を入れた後に閉めてから再度開けると、内容物は全て消失します。

SCP-213-JPの後部トランクより消失したものは、恐らくは異次元に存在すると思われる施設(以降、SCP-213-JP-1と分類)へと転移することが明らかになっています。

SCP-213-JP-1はある種の収容所・保管庫の様な機能を果たしているものとされていますが、その目的は不明です。

SCP-213-JP-1には敵対的な人型SCPオブジェクト(SCP-213-JP-2)が複数存在し、施設を運用しているものとされています。

SCP-213-JPは日本国内で起きた一連の誘拐・失踪事件に深く関与した疑いがあるため、警察によりマーキングされていました。

警察が令状をとり容疑者宅を捜査する際、その容疑者自身がSCP-213-JPの後部トランクに逃げ込み消失したことで、財団はSCP-213-JPの調査及び確保に踏み切りました。

実験記録213-JP-01 – 20??/09/01
被験者: なし
目的: SCP-213-JPの転移先の無人調査
実施方法: GPSロケーター付きの遠隔探査ドローンをSCP-213-JPの後部トランクに入れて閉めた。
結果: ドローンが消失した。通信は途絶し、GPS装置はその機能を失った。


実験記録213-JP-02 – 20??/09/02

被験者: D-0442(自身の妹の暴行殺人に関与した6名の人物の殺害により起訴、過去4度にわたる刑務所及び拘置所からの脱獄・逃走歴あり)
目的: SCP-213-JPの転移先での有人探査及び可能であればドローンの回収。元の所有者が自らトランクに入り消失したことから、転移先は比較的安全であるはずだと判断。
実施方法: D-0442にサバイバル・パックと音声通信装置、記録用カメラを持たせ、SCP-213-JPの後部トランクに入れて閉めた。
結果: D-0442が消失した。音声通信は途絶し、その機能を失った。

文書213-JP-A:手書きのメモ
20??/09/06、SCP-213-JPの後部トランク内に、差出人不明のメモが落ちているのを担当職員の1人が発見しました。内容は以下の通りです。

 アンタらにとって、重要だと思うことだけを書いておく。あのトランクの転移先は刑務所みたいな場所だった。
 32階立てでおそらくは十字型の建物だ。トランクを閉められ、次に蓋が開いた時、俺は棺みたいな箱の中に横たわっているのに気付いた。そこは5m四方の監獄だった。
 ここじゃ1人につきひとつ監房が割り当てられてるみたいだ。監房と監房の間は1mで、それが端から1000mくらいの長さで十字の中央にまで続いている。十字の中央には吹き抜けがあって、そこから緑色の曇り空が見えるが、外がどうなっているのかは分からない。
 監房の中には人が入っていることが多いが、たまにたくさんの麻薬や銃とか、明らかにSCPオブジェクトだろうモノが入ってることがある。注意しろ。
ここじゃ顔に触手のついたデカい人型の化け物が、看守みたいな役割を果たしている。奴らは賢くないが、あなどるな。挟み撃ちや待ち伏せくらいはできるし、力強く足も速い。俺の次に送られたあのエージェント、あいつが撃った弾は全部化け物に当たってはいたが、まるで効果はなかった。
 ここからは特に重要だ。監房にはひとつ、必ず例の箱が置いてある。つまりあの車以外にも同じ性質を持つヤツが他にもたくさんあるはずだ。そのトランクがこちらの世界への『入り口』みたいな役目を果たしている。
 で、監房の箱には鍵穴が付いてる。箱の中に何かモノを入れて鍵を回すと、今度はそいつが『出口』になるようだ。監房からうまいこと出た後、俺はここから何とか出られないか観察してみた。
 見回りの隙をついたり、時には別の監房に逃げ込んで、あたかもそこに元から居たように振る舞ったりして、脱出手段を探した。
 そして、俺は鍵を見つけた。化け物の1匹から奪った。この鍵はどの箱の鍵穴にも合う。もし万が一、他に誰か送るならまずは鍵を探させろ。それが唯一、ここから出る手段だ。忘れるな。

その後、SCP-213-JPの後部トランク内に以下の内容が書かれた紙の切れ端が落ちているのを担当主任の1人が発見しました。

定期的にサバイバル・パックをトランクに入れてくれ
それと新品のバールがあると助かる

現在までに、SCP-213-JP-1から生還したと思われる行方不明者は日本国内だけで91人にまでのぼりました。

このDクラス職員有能すぎない!?スパイみたい!!

彼らには情報を得るための質問を行い、それが終わった後でならCクラスの記憶処理を施してから解放しても構いません。

財団の押収した48台の車両の内、45台は既に後部トランクで消失が発生しなくなっている事が判明しました。

担当研究員はその45台に引き続き消失実験を行い、完全にその異常性が失われていることを確認して下さい。

車のトランクは入り口!?別空間へと繋がっている!!このD-0442が優秀すぎるため、SCP-219-JPの全容がわかり、囚われていた人々も救出されました!でもD-0442はどーやって帰ってくるのでしょう・・・

著者 [grejum] 原作記事 http://scp-jp.wikidot.com/scp-213-jp

tale:Silver Bullet 死にゆく俺より敬礼を

taleとは記事の後書きのような作品です。

 Mabel Amber, who will one dayによるPixabayからの画像

しくじった。

長い廊下を抜け、そのイソギンチャクみたいな化け物と鉢合わせした瞬間、俺の脳裏に横切ったのはその言葉と妹の笑顔だった。


手持ちの武器はバールが一本。そんなもんじゃ銃弾すら弾くコイツには通用しない。

化け物が俺に手を伸ばす。畜生、似合いの最期って奴だ。

妹を嬲り殺した男たちの顔を思い出す。この世界にはヒーローなんていない。俺がやったことを、きっと妹は望んでいなかった。

だからこれは罰なんだ。俺は永遠に監獄で責め苛まれるべきだったんだ。救えなかったくせに、護れなかったくせに。

だが、死ぬ前にこんな化け物共に一泡吹かせてやれたのは痛快だった。ヒーローの真似事ができたのは、嬉しかった。

最期になるだろうその瞬間を待つ俺の耳に、一発の銃声が響いた。

目を開く。化け物はその銃声に反応し、一瞬俺から目を離す。

チャンスだ、何が起こったのかは知らないが今なら逃げ出せる。幸い、化け物の足はそう速くない。ここから上手く逃げるルートも確認している。

踵を返し、真逆の方向に走りこむ。ジグザグに動き回り、監獄の扉を開け、ダクトに潜り込む。

ここまで来れば少なくとも化け物はやって来れない。

気を付けるべきなのはあの化け物共を雇っている人間側だ。とにかく少なくともこの場所を離れなければ。上へ行くか下へ向かうか。

直後、俺の潜り込んだ通気口の蓋が開いた音がした。もう見つかったのか、心臓の鼓動が高鳴る。口の中が異常なくらい乾く。

こうなれば相討ち覚悟だ。俺はバールを握りしめ、屈むのがやっとな通気ダクトの中でソイツを待った。

相手が銃を持ってれば、確実に俺は死ぬだろう。…じっとりと滲む手の汗。そして、相手は姿を現した。

手には銃が握られている。それを目に留めた俺は即座にその脳天めがけ、バールを振り下ろそうとして。

???
???

「待ってくれ!」

バールが頭蓋骨を砕く直前、相手、男は両手を上げて英語で叫んだ。

振り下ろす手を止めた理由はその叫びに驚いたのもあった。だが、何よりも仄明るい光に照らされていたのは。

???
???

「…お前は」

???
???

「ん? そのカッコ、お仲間か! 英語話せてるとこ見るとチャイニーズか?」

???
???

「いや、日本人だ。英語は留学の経験があるんでな。そんなことより、お前は…」

???
???

「ああ、名前なんざ知らない方がいいんだ。お似合いの名前が俺達にはあるだろ? ケツ拭く紙にもなりゃしねえ洗礼名がよ」

俺と同じオレンジ色のジャンプスーツ。コイツは。

<meta charset="utf-8">D-14134
D-14134

「俺はD-14134だ、よろしくな、兄ちゃん」

<meta charset="utf-8">D-0442
D-0442

「D-0442だ」

俺と同じ、糞野郎らしい。

D-14134と名乗ったその男は、ふうと息を吐いてへたり込んだ。その手には使いこまれた拳銃。鈍く光っている。

<meta charset="utf-8">D-0442
D-0442

「さっきのアレは」

<meta charset="utf-8">D-14134
D-14134

「ああ、お前を助けたヤツな。来たばっかでよく分かんなかったけどよ、どうにも困ってそうだったんで思わずだ」

<meta charset="utf-8">D-0442
D-0442

「助かった、アレがなけりゃ死んでたからな」

その言葉から想像はできていたが俺とは人種が違う。褐色の肌に白色が混ざり始めのごわごわとした髪。


年齢は俺より一回りは上だろう。共通点はその名前と着ているジャンプスーツくらいだ。

<meta charset="utf-8">D-14134
D-14134

「で、兄ちゃん。何かもう心臓おかしくなりそうで。煙草とかねえか?」

<meta charset="utf-8">D-0442
D-0442

「あると思うか」

<meta charset="utf-8">D-14134
D-14134

「ちぇっ、じゃあ、ジャパニーズってことはほら、ソニーのCDプレイヤーとかそんなん持ってないのか? 音楽はいいぜ」

<meta charset="utf-8">D-0442
D-0442

「アンタが俺と同じ身分なら分かるだろ。それに、だ、今時iPodやウォークマンだろ?」

<meta charset="utf-8">D-14134
D-14134

「…? ちょい待ち、何だそりゃ?」

コッチの台詞だ。怪訝そうな俺にD-14134も同じ表情を向けてきた。

<meta charset="utf-8">D-14134
D-14134

「いやいや、冗談よせよ、ほら、去年発売しただろ?」

<meta charset="utf-8">D-0442
D-0442

「何言ってんだ、今はもっと高性能な電子機器が大量に出てる」

俺の言葉にD-14134は人懐っこそうな目を丸める。どうしたんだ? 疑問に答えず、D-14134は矢継ぎ早に質問を投げてくる。

<meta charset="utf-8">D-14134
D-14134

「…なあ、E.Tは去年の映画だよな? ブレードランナーは?」

<meta charset="utf-8">D-0442
D-0442

「? そんなのは30年近く前の映画だぞ?」

D-14134の顔が徐々に呆然としたものに変わっていく。

ついに半分笑い出した。どうも何かしら脳の処理機能を超えたらしい。
そして、しばらくの沈黙があり、半ば諦めたようにD-14134が尋ねる。

<meta charset="utf-8">D-14134
D-14134

「…兄ちゃん、今は1983年だよな?」

<meta charset="utf-8">D-0442
D-0442

「冗談、30年は経ってるぞ」

<meta charset="utf-8">D-14134
D-14134

「…ガッデム」

そして、両手を上へ突き出し、そのまま仰向けに倒れこんだ。褐色の腕は傷塗れだった。

<meta charset="utf-8">D-0442
D-0442

「…つまり、アンタは30年近く前の人間で、アメリカで何かの化物に接触した結果、此処に来たってことか」

<meta charset="utf-8">D-14134
D-14134

「そうみたいだな、…はあ、ようやく全部の扉を閉めたってのによ。次もこんなのかよ。どうも俺は女神に嫌われてるらしい」

D-14134の話を聞くに、D-14134も俺と同じく「財団」という組織に雇われ、半死半生の目に遭ったらしい。

そして、何とかそれから生き延び、辿り着いたのがこの監獄。何とも数奇な運命だと思う。

<meta charset="utf-8">D-0442
D-0442

「まあ、ツイてる方じゃないか? 偶然俺にも会えたわけだし」

<meta charset="utf-8">D-14134
D-14134

「そうかもしれないがね…、まあ、悩んでいても仕方がない、兄ちゃんは何で此処に?」

<meta charset="utf-8">D-0442
D-0442

「…俺か?」

D-14134
D-14134

「おうさ、まあ仮初だろうと出会っちまったのは縁って奴よ。相手のこと知るのは悪かねえや」

…此処に、それは何で「財団」に雇われたのか、そういうことだろう。「財団」の交渉を知るD-14134なら、それがどういう意味かは分かっているはずだ。つまりは凶悪犯、重大な犯罪を犯した人間。

…俺のそれは。

俺が黙りこくっているのを見て、D-14134はその目を細め、話を引き取った。
見た目以上に洞察力があるのか、内心の葛藤を察してくれたらしい。

<meta charset="utf-8">D-14134
D-14134

「…あー、話したくないんなら俺から話すか。まあ、俺はデトロイトで生まれてよ、ナムで戦争なんかにも参加したんだが…」

D-14134の人生は戦後のアメリカ史をそのままなぞったような人生だった。ベトナム戦争から帰還し、十分な補償金も出ないままずるずると下へ、下へと堕ちていった。

犯罪、アルコール、薬物…。同情こそされ、けして肯定のできない人生。だが、そんな負の面を、俺は何故かD-14134から感じることはなかった。

<meta charset="utf-8">D-14134
D-14134

「で、ムカつくお巡り一発ズドンで豚箱さ。あとはお前と一緒だろ」

<meta charset="utf-8">D-0442
D-0442

「…そうか」

自嘲するように薄く笑うD-14134からは、説明のできない何かを感じた。強い意志、希望、…あるいは、それと思わせるほどの絶望。

コイツになら、少しくらいは話してもいいかもしれない。そう思ったのは何故だろうか。

D-14134
D-14134

「まあ、その後の話は追々してやるよ、で、話す気にはなったかい?」

<meta charset="utf-8">D-0442
D-0442

「…大した話じゃないけどな」

俺は気が付くと話していた。堰を切ったように言葉が何故か流れてくる。妹のこと、そして妹を殺した屑共のこと、「財団」に雇われ、ここに来たこと。そして今は此処で、鍵を壊す役割を担っていることを。

俺の言葉を、D-14134は黙って銃を撫でながら聞いていた。話し終えると、D-14134は俺の目をゆっくりと見つめ、静かに呟いた。

<meta charset="utf-8">D-14134
D-14134

「…そりゃまあ、色々悲惨だったな」

<meta charset="utf-8">D-0442
D-0442

「こうなったことに後悔はしてないさ。…ただ」

<meta charset="utf-8">D-14134
D-14134

「言わなくていい、誰しも誰かを背負ってる。俺達みたいな屑でもな」

仄明るい通気口に沈黙が戻る。俺達屑野郎二人は、互いに相手の言葉を探っていた。

最初にそれを破ったのは俺だった。

<meta charset="utf-8">D-0442
D-0442

「…帰る方法は分かってる、帰るか?」

<meta charset="utf-8">D-14134
D-14134

「…お前はどうするんだよ、兄ちゃん」

<meta charset="utf-8">D-0442
D-0442

「俺はまだこの監獄で鍵を壊さなくちゃならない、誰か一人はこっちに残って、扉を閉めなくちゃいけないからな」

俺の言葉に、D-14134の目が変わった。今までのどこか人懐っこく、それでいて意思を持った瞳はそのままに、俺へ憐れむような視線を向ける。どこか悲し気に、どこか寂し気に。静かにD-14134は俺に問うた。

<meta charset="utf-8">D-14134
D-14134

「…なあ、兄ちゃん。お前は何を救おうとしてるんだ?」

<meta charset="utf-8">D-0442
D-0442

「それは此処に囚われてる・・・」

<meta charset="utf-8">D-14134
D-14134

「違うだろ、嘘吐くんじゃあねえよ」


吐き捨てるように放たれたその言葉、俺は思わず反射的に言い返す。

<meta charset="utf-8">D-0442
D-0442

「嘘なんて」

<meta charset="utf-8">D-14134
D-14134

「お前はお前の頭ン中の監獄に閉じ込められてんだ、お前は人を殺した瞬間から一切進んじゃいねえ」

だが、D-14134は俺の反論を許さなかった。まるで弾丸のように俺の心を、言葉を、D-14134の舌は抉っていく。撃ちこまれた弾丸が俺を突き抜け、血反吐を吐かせる。俺は、進んでいない?

違う、俺は人を救った、俺は誰かを護った。だが、そんな薄っぺらい盾はD-14134の放つ言葉と視線の前では紙切れも同然だった。

弾丸みたいだ。酷く冷たく、酷く熱い。何なんだ、いったい、コイツは、D-14134は、何を抱えているんだ。何でこんなにも、鋭く冷たい弾を持っているんだ。

<meta charset="utf-8">D-14134
D-14134

「お前はただ、ずっと妹さんを救おうとしてるだけだ、お前はヒーローなんかじゃねえ、人殺しだ」

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「そんなこと」

俺は言い返そうと口を開く。その口をD-14134の弾丸は抉る。

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「いいや、分かっちゃいねえ。お前は救ってるんじゃねえ。監獄に閉じこもり、重りで腐る足を見て、その重さで満足してるだけだ」

俺は、あの日、妹を見つけたあの日から。

ずっと、ずっと、ずっと逃げて。そして、誰かを助けたふりをして。

止まって、死のうとしていただけだっていうのか。

…だったら、俺は何なんだ、お前は何なんだ。人を救うことが悪い事かよ、人を救って死ぬことは、いけないことなのかよ。

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「だったら、だったらどうしろって言うんだ! 救うなってのか、死ねってのか、なら、俺達は!」

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「…俺達は銀の弾丸だ、不幸にも心臓を貫き、そのまま抜け出しちまった弾丸だ」

俺の叫びをD-14134は許さない。
静かにD-14134は、…銀の弾丸、怪物を殺すアーティファクトはその役目に自嘲している。

俺は気づいた。いや、知っていた。
怪物を殺すヒーローなんていない。あるのは、ただ怪物から人々を護る意思だ。
そして俺達はそんな意思持つ機械共の武器、それにも満たない銃弾に過ぎない。

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「誰かの願いが、誰かの思いが、そんなもんを後生大事に抱かされちまった、あると思わされちまった馬鹿な鉄砲玉だよ」

その表情は、赦しだ。どうしようもない絶望を、虚妄を、人殺しは赦し合う。
死ぬまで、永遠に俺達は人殺しのままで。

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「お前は救われねえ、逃げられねえ」

人殺しは言葉を吐き捨てる。拳銃を握るその手は血管が浮き出ている。

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「俺も逃れられねえ、俺に祈りを託したとあるヒーローから。俺は扉を閉め続けなければ」

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「アンタは」

D-14134は俺の答えに肩を竦め、逆に聞き返す。

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「どうする、兄ちゃん。…開いたのならば、閉じない扉は無い。放たれた銀の銃弾が、心臓を貫くまで戻らないように」

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「認めろっていうのか」

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「ああ、俺達は何をしようと納得できない。十字架を最後の審判の日まで背負い続ける」

俺は妹の顔を思い出した。その笑顔は血に塗れていた。
俺は納得していない、だが、まだ俺は飛んでいる。貫き続ける。
俺に意思を託したのは誰だ、俺に十字架を背負わせたのは俺だ。

俺は、監獄から出なくてはいけないんだ。十字架を背負い、逃げられず、それでも。

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「死にゆくまで」

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「そう、死にゆき、忘れられるまで」

俺は、俺達は、銀の弾丸は。

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「…俺は行く、鍵を壊し続ける」

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「分かった、ならまあ、折角だ。行こうぜ。鍵を閉めるのには慣れてるからよ」

息を深くつき、頬を叩く。ぐずぐずしている暇はない、奴らに見つけられたら面倒だ。D-14134を急かし、立ち上がらせる。コイツの持つ銃は奴らへの牽制になる。仄明るい通路に一歩を踏み出す。ふ、と、何かが耳をくすぐった。D-14134が何かを呟いていた。

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「…Morituri te salutant. 死にゆく俺から敬礼を、兄ちゃん」

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「…ああ、死にゆく俺から敬礼を」

俺達はいずれ地面に落ちるまで、飛ばなくちゃいけない。
だがそれはまだ早い。銀の銃弾、ヒーローなんかじゃない、ただの道具にしかすぎない俺達は。

それでも、それでも、死に向かい突き進む。開け放たれた扉を閉じるために、鍵を壊すために。
その先は、考える余裕すらない。残酷で無意味なこの世界で。

背負い続け、飛び続ける。いつか落ちるその日まで。放たれたのだから、貫いてしまったのだから。
銀の銃弾は、血に塗れたまま落ちる日を願う。

…だが、それはまだ先だ。

俺達はここにいる。

ここにいるんだ。

だから。

巡り合った2人のDクラス職員!!彼らはまさに銀の銃弾として様々な人の祈りをのせて飛んでいきます!現に今も戦い続けているのかもしれない・・・

著者 [kyougoku08] 原作記事 http://scp-jp.wikidot.com/silver-bullet

終わり

jplenioによるPixabayからの画像

今回は2人のDクラス職員が活躍する記事を紹介しました!Taleでは2人の性格や過去が描写されていてとてもおもしろい作品です!!原作記事が気になったら是非読んでみてください!!

この記事はCC BY-SA 3.0ライセンスに基づきます。

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